受容野の定量的測定法
 

受容野を測定する一つの方法は、視野のある領域内のどの点の反応性が高いかを、しらみつぶしに測定してやることです。従来、このような力ずくの方法は、測定時間がかかりすぎるという、欠点がありましたが、逆相関法(reverse correlation)と呼ばれる方法が、実用化され、ニューロンからの限られた記録時間内で可能になりました。
 

受容野の測定に使われた刺激(MPEG Movie、実際に実験に使った刺激ではない)

実際の刺激と単純型細胞からのデータを使い、受容野がReverse Correlationにより現れてくる模様を示すビデオがあるので、[ここにある Movie-1C]を見てください
 
[余談ですが、上記のビデオは実際の細胞からのデータを実験時の通りに再生するプログラムを書いて、データを再生しながら、その時に動物が見ていた刺激も同時に表示したものをビデオで記録合成したものです。こうした実験中も実験制御ソフトウエアはビデオ画面下部の解析結果をリアルタイム表示していました。実験中どんなデータがとれているのかを、リアルタイムにある程度解析して途中経過を見えるようにすることは、神経科学の実験には必須だと私は考えています。実験中はメクラで、測定が終わってデータがセーブされて初めて解析なんてシステムを作るのは、実験システムの設計思想としては失格だと思います。刺激の位置が受容野の場所から外れていても、測定が終わるまでわからないのでは、貴重な時間の無駄になるし、ノイズが入っても分からないなどデータの品質にも関わるからです。]

上のMPEG Movieで示した刺激では、白または黒の小さな棒状の刺激(傾きを最適化してある)が、ある正方形の領域内のいろいろな場所に、ランダムな順番で一つ一つ提示されます。提示頻度は、一秒間に約20−25にもなります。(実際に、この刺激を私たちが見ると、目の残像のために、数個同時に提示されているかの様にに見えますが、そうではありません。)この刺激は、下の図の上部に示したように、白と黒のパターンの時間系列です。

この刺激によって、細胞が発火(下図の Spike Train)しますが、細胞が発火する直前の、何10、あるいは何100ミリ秒前には、細胞の反応性の高い場所に刺激が提示されたと考えられます。どの場所が良かったのか、また、どのくらいの時間遅れを持って細胞が発火したのかは、細胞の発火直前の刺激系列を切り出してきて(上から2列目の立方体の列)、細胞の発火時刻を合わせて、全ての活動電位(spikes, action potentials)について、立方体に含まれる刺激を平均化することで、求められます。

つまり、スパイクは全て、それぞれ違った刺激によって引き起こされたのですが、上の操作により、細胞が発火する原因となった刺激の平均像が求められます。これが、まさに受容野になります。
 


逆相関法による時空間受容野の測定
 

上の図からわかるように、実は、受容野は空間(x、y)と時間(t)の3次元からなる領域で定義されるものです。つまり、視野内のどの位置が細胞を発火させるのに有効であったかだけでなく、どの位置の刺激が、どんな時間遅れを持って細胞の発火に貢献してきたのかを考える必要があります。時間軸、あるいは空間のみの記述では、不完全な受容野の概観しか得ることができません。
 



(last modified: June 12, 2000)